みぃうのブログ

腐女子が、語ったり、絵を投稿したり、小説書いたりします。

【高緑】捨てないで【女体化】

※一部女体化※

真ちゃんが高尾くんに”女子じゃないから”という理由で振られて、女の子になっちゃった真ちゃんがもう一度告って、付き会う話です。

 

おkな方だけ。

 勇気を持って告白をした。
無理だと知っていた。
なぜなら、俺は男だ。それに、性格も身長も口調もすべてがだめだめだったのだ。

『女の子だったら、即OKだったんだけどなー・・・。』

どう頑張っても乗り越えられない壁。

女子になりたかった。

そうすれば、この恋は否定されない。
軽蔑されない。

「女子になりたいのだよ・・・。」

ぎゅっと今日のラッキーアイテム抱き枕を抱きしめ、眠りについた。
時計に刻まれた時間は、22:00だった。


*****

「ん、ぅ、」

朝目が覚めると、やはり、頭が痛かった。
しかもなんか、いつもより発した自分の声音が高かったきがする。体が重い、というか、胸のあたりが重い。

「ん・・・?」

手を胸に持っていくと、いつもはない柔らかい膨らみがあった。

「え?」

目線を下にすると、ダボダボの服と、女性のような胸。

「へ?あ、ええええええええ?!!」







一旦自分を落ち着かせ、今日のことを考える。
まず、学校がある。だが、制服は今の自分の身長じゃ大きすぎる。
帝光時代のなら、ギリギリだが、男性ものだ。
桃井に電話するか?いや、でも絶対迷惑だ。しかも、電話しても桃井の家まで借りに行く服がない。

「あ、」

そうだ、妹に借りればいいじゃないか。多分、前予備にと夏服冬服ともに2着ずつ買っていたはずだ。
サイズも多分切れる。
よし。ああ、妹がいてよかった。


*****

「しーんちゃん、て、えええええええええ、あ、妹さん?」

「・・・、バカ尾、違うのだよ」

「その語尾やっぱ真ちゃん?!え、その服と髪とかどうしたの。」

「朝おきたら、女性になっていたのだよ。服は妹の予備の制服を借りた。流石に、男性ものは大きすぎるのだよ・・・。」

へー、と言いながら、自転車から降りて自分と身長を比べ出す高尾。

「うし!俺のがでかい!!!!」

「・・・、女の俺に勝って嬉しいのか。」

「その目やめて!!真ちゃんに勝てたのがうれしーの!!!」




その後、先生に事情を説明し、すぐ戻るかもしれないから、と制服は買わないでおいた。
一週間で戻らなかったら買うが、一週間はこの制服でもいいと許可をもらった。
先生との話が長引いて、結局午前の授業には出られなかった。
クラスに戻ると、ちらちら見られるし、(特に男子)図書室に寄った。
幸い、今は休み時間だしどこに行こうと自由だろう。

「「あ、」」

図書室は誰もいないと思ったが先着がいた。
宮地先輩だ。

「こんにちは、」

「おー、・・・ほんとに、女になったんだな・・・。」

「そうみたいですね・・・。」

図書室のおすすめコーナーから適当に本を取り、宮地さんの席の目の前に座った。




「・・・・、なの、さっきから視線なんなんですか・・・。」

「んー?いやー、男の時でも美人系だったけど、女だとまた一段と美人だな、っとおもってよー。」

「美人ではありません。」

「いや、美人だろ、」

すっと手が伸びてきて、なんだろうと本から視線を離すと、なぜか髪を触られた。

「髪長いのなー、しかも、綺麗な髪してんなお前。」

「そうですか?ありがとうございます・・・?」

頬杖をしながら自分の髪を指に絡めている宮地さんが、綺麗に笑った。
どきっと胸が高鳴った。

「宮地さ」「しんちゃああああああああん!!!」

バンッと勢いよく開いたドアにビクッとする。
振り向くと、走ったのか息を乱した高尾がたっていた。

「?高尾、静かに入ってくるのだよ。いくら、宮地さんとお・・・私しかいないからといって。」

「そうだそうだ。てか、いま俺って言いかけただろwww」

「あー、もー!ごめんなさい!あと、真ちゃん次移動教室!!」

「ああ、そうだったな、では、失礼します。宮地さん。」

「おう。」

高尾に手を引かれたが、一応挨拶し、図書館をあとにした。

「たかお、はやいのだよ、」

「あ、ごめん真ちゃん。」

スピードを緩めてくれて、今になって高尾と手をつないでることに気がつき、手を急いで離したが、離した手をまた握られてしまう。

そういえば、俺は今女性だ。もし、もしもだ、いま告白したらOKをもらえるだろうか・・・?
ぎゅっと、手をつないでない方の手を握り締め、声を出した。

「たかおっ、」

「ん・・・?」

「あの、もし、今告白したらお前はお・・・、私を受け入れてくれるか?」

「え・・・?」

どきどきする。無理だと言われたら、諦めるしかない。どうせいつ戻るかわからないのだ。

「私が、戻るまででいいのだよ。駄目か・・・?」

「ううん。ダメじゃない。」

ぎゅっと、手を握り締められ、嬉しくて、恥ずかしくて、顔が熱い。勝手に表情が緩んでしまう。きっと今までで一番だらしのない顔をしているのだろう。片手で口元を覆い、喜びを握り締める。
すき、好きだ。

溢れていく思いは止まらなかった。

**

 

あれから何年経っただろうか。
今も変わらず戻らない体に安心しつつも、本当にいいのだろうかと思ってしまう。

今の私は高尾と同居している。大学に通うのに、一人暮らしするから一緒に暮らそうと誘われ、即OK。
自分は大学に行っているが、今は夏休みだった。自分が行っている大学は他より少し休みが長い。
高尾はまだ休みに入っていないため、今は留守だ。

実は自分のお腹には子供がいる。だが、高尾とは同意の上ではない。
いつ別れるかもわからない、いつ戻ってしまうかもわからない、そんな状況で子作りはいけないと思った。
思ったのだが、私はどうしても高尾との子供が欲しかった。子供のためには良くないと思った。だけど、高尾と少しでも愛し合えた思い出が欲しかった。なんて自分勝手だと思う。だから私はダメなのだ。避妊具に細工をした。私のお腹は、あまり大きくならなかった。だから高尾にもバレずに、もうすぐ一年。
高尾は明日から、大学の旅行で2週間いない。もうすぐで生まれそうなので、都合が良い。
そっと、自分のお腹を撫でる。少し、動いた気がした。

「たーだいまー!って、真ちゃんなんで、自分のお腹なでて笑ってんのwww」

「おかえりなのだよ。・・・、腹を壊したがもう痛くなくなってほっとしただけなのだよ。」

「そうなの?wwwww」

「ああ。」

嘘だ。だが、仕方ないのだ。ごめんなさいと心の中で呟く。ごめんなさいという言葉は、高尾と付き合ってもらえたときから何千、何万と呟いた。それでも、まだ足りない。無理やり私なんかに付き合ってもらい、同居までさせ、挙げ句の果てには子供を授かってしまった。ごめんなさい。許して。恨まれてもいい。だから、少しあなたとの子供ができた喜びに溺れたい。いっそ、男に戻って高尾のそばから永遠にはねれてしまえればいい。でも、今は女の体。まだこの幸せを噛み締めていたいのだ。ごめんなさい。ひどい男でごめんなさい。大好きです。無理につきわせたのに、恋人のように触れてきてくれるあなたの手、ぬくもり、暖かさ大好きです。

「しーんちゃん」

「?・・・、ん、」

高尾の唇が、私の唇を塞いだ。優しい、優しすぎるキス。

「どったの?考え事?」

唇を離し、先ほど無言だった私を気にかけてくれたのだろう。本当に優しい人。

「少し、な。ところでお前は明日の支度をしなくていいのか?」

「ふふん、もう終わってるのだよ!」

「そうか。」

この幸せが少しでも長く続けばいいのに。
そう、心から思った。












*****










「じゃあ、真ちゃん行ってきます。」

「ああ、気をつけて行ってくるのだよ。」

もしかしたら、高尾が帰ってくる前に戻ってしまうかもしれない。だが、いいこの綺麗に笑うお前が、素敵な女性と幸せになれれば。
女の体になった私は、高尾より少し背が低かった。靴を履いた高尾が、少し身をかがめて触れるだけのキスをした。

「えへへ、行ってきますのちゅーなのだよ!」

「っ、ば、馬鹿め、早く行くのだよ!!」

真ちゃん可愛いなんて、思ってもないようなことを言う高尾を外に追い出す。ゆっくり歩き出す高尾の背中を、ドアを少し開き見えなくなるまで眺めた。これで最後かもしれない。2週間は長い。いつ戻ってもおかしくない。

「・・・、ご飯は高尾が用意してくれたからしばらくは大丈夫だろう。」

少し寝るか、そう思いドアの鍵を閉め寝室へ向かった。
















++













あれからしばらくして、ようやく子供が生まれた。男の子の元気がいい子だった。今はもう退院し、実家に戻っている。まだ体は戻っておらず、子供は母に毎日来るのでと頼み預かってもらった。今はまだ高尾は帰ってこない予定なので、もう少し子供と一緒に入れる。子供の名前は和真。高尾と私の名前を入れさせてもらった。
母に教わりながら一生懸命子供の世話の方法を覚えてゆく。オムツを替えたり、母乳をあげたり、私には大変なことばかりだ。だが、楽しい。この子が高尾との子だと思うと愛おしく、お世話が楽しい。
寝てしまった和真のほっぺをツンツンとつつく。すると、小さい手が私の手をとって小さい口でチュウチュウと吸っている。可愛い。髪の色は普通の黒。高尾似だ。瞳は少し緑がかっている。間違いなく私たちのDNAだ。これからどんどん高尾に似て、格好良く気配りができて、誰にでも優しい素晴らしい人になるのだろう。

「かわいいわね、」

「はい、」

「高尾くんには、言っていないの?」

「・・・、はい。」

母は、私と高尾が男同士でもいいと許してくれたのだ。優しい母。孫をこんな形で連れてきてごめんなさい。



***

「たっだいまー、・・・・ん?」

旅行から一日以上早く帰って来れた俺は、いち早く真ちゃんに会いたくて急いで帰ってきた。が、家についても緑間の姿が見えなかった。あれ?出かけるなんて言ってたっけ?もう午後九時だ。遅い。特に真ちゃんは、基本十時には寝ているので、この時間には必ずいるはずだ。

「真ちゃん?」

いない、いない・・・、
どこに行ったのだ?
こんな時間に。

「緑間っ・・・!!!」

家を飛び出し、緑間が行きそうな場所を探し回るが、どこにもいない。
おちつけ、そうだ、携帯に電話しよう。いや、メール、

『真ちゃん、俺旅行から早く帰ってこれたんだけど、今どこ?』

送信。
ドキドキしながら、緑間になにもありませんように、そう願っていると、返信が来た。

『すまない、赤司たちに誘われ、旅行に行っている。明日に帰る。』

そのメールに安堵しながらも、またキセキたちか、とイライラした。


***

「ただいま、なのだよ」

高尾の予想外の早めの帰宅に、家にいなかった理由を赤司たちのせいにしてしまい、罪悪感がする。一応大きなバックを持っているし、旅行帰りには見えるだろう。
だが、高尾はこの時間起きているとは考えにくい。なぜならば、今は朝の5時だ。高尾は今日は休みだと思うのでまだ寝ているに違いない。そっと荷物を自分の部屋に置きリビングに向かう。ドアを開くと、ソファーで毛布一枚かけて寝ている高尾の姿。なぜ布団で寝なかったのか不思議に思ったが、心地よさそうにねている。近くまでそっと足を運び、顔を覗き込む。綺麗な顔だ。和真も綺麗な顔だった。やっぱり高尾譲りなのだろう。

「ふふ、」

「・・・、なーに笑ってんの?」

突然ぐいっと腕を引かれ、ソファーに仰向けに押し倒された。起きていたのか。

「だいたいサー、真ちゃんに早く会いたくて帰ってきたのに、いねーし。心配したじゃん。」

「ぅ・・・、す、すまない・・・。」

高尾の口から、会いたかったと言われ顔が熱くなっていくのがわかる。

「悪かったのだよ、だからそこをどけ・・・、」

「ヤダに決まってんじゃん。ちゃんと悪かったと思ってるの?」

ギラギラと光る高尾の目が怖い。何をそんなに怒っているのだよ。やはりコイツはよくわからん。

「おもっているから・・・っ、」

「じゃあさ、」

今日一日俺の傍にいて。と、ぎゅうっと抱きしめられた。それとほぼ同時に私の頭もフリーズした。

















「お、おきた?」

目覚めると、私はなぜか高尾に背後から抱きしめられ、ソファーに座っていた。(実際は私は高尾の膝の上に座わって、高尾に寄りかかっていた。)

「なっ?!お、下ろせ!!」

「いやだ。いっただろ?今日一日傍にいてって。」

「・・・っ、だが、重いだろう?しかも暑いのだよ・・・。」

「は?真ちゃんちゃんと食べてんのってくらい軽いよ?てか、痩せた?冷房もきいてるし、寒いくらい。」

なら、冷房を切れと言いたかったが、これ以上何を言っても聞かなそうだと諦めて口を閉ざした。

「・・・、メールしてもいいか?」

「・・・・・・いーよ。」

高尾の了解を得て、携帯を手に取る。
『ごめんなさい。今日は行けなさそうです。』そう、母に送信し、携帯をテーブルに置く。

「ねえ、今のメール誰に送ったの・・・?」

「?母だが?」

「ふーん・・・。」

しばらく背後が静かになり、あっ、そーだ!と、いきなり大きな声で言うのでびくっとしてしまう。

「真ちゃん、これから俺が一緒に入れないとき、どこに行くのか教えて?」

「?なぜだ。」

「前みたいに探し回るのもーやだし!知ってれば、安心もするでしょ?」

高尾が言うのも、一理ある。っというか、前探し回ってくれたのか?こんなやつのために?お前は本当に誰にでも優しい、いいやつなのだな・・・。

「わかったのだよ。だから、はなれろ」

「嫌だって言ったじゃん。」

「・・・はぁ・・・、あ、明日出かけるのだよ・・・。」

「?どこに?」

「実家だ。」

「え・・・、なんで?」

「・・・、母が風邪をひいてな、父は仕事であまりお世話できないのだよ。だから、私がいってお世話するのだよ。」

「へぇ・・・、お大事に・・・。」

「母が治るまで、毎日行くのだよ。」

「わかった。でも、暗くなる前に帰ってきて?暗くなると変な奴ら出てくるし。」

「?」

ほら、痴漢とか~、と言ってくる高尾に、そいつらは私なんかを痴漢なんてしないと思うのだよ。と言うと、わかってないなー・・・。とため息を吐かれてしまった。意味がわからん。

「ほんと真ちゃん、危険すぎ・・・・。」

「?俺は危険なのか?」

ふーっと、またため息を吐く高尾。どうしたんだ?やはり重いのだろうか?ならば、どいたほうがやっぱり良いだろうか?

「たかおっ、」

「ん?なあに?」

「・・・・、トイレ行ってくるから離れろ、」

「えー、うー、・・・・うん、わかった」

しぶしぶという感じでやっと離してくれた高尾。ひょいっと高尾から離れると、とたんに肌寒く感じる。トイレのついでに、部屋で上着をとってこようか?そう考えながら、リビングをあとにした。




******
一週間、あの幸せな一日から、もう一週間経っていた。高尾には今日も行くのだよとちゃんと伝え、朝10時くらいから、夜8時くらいまでには帰ってきていた。
今日は高尾が帰ってこなかったようだ。朝起きるといつも隣にあった温もりがなかった。そして、ふと違和感に気がついた。上半身を起き上がらせ、下を見た。昨日まであった膨らみはなく、いつもより高い目線。小さめの服。下半身には、男にはあるものがついていた。メガネをとってもう一度見るとゴツゴツとした指があった。
後ろに手を回すと、短い髪の毛。昨日までは肩くらいまであった。

「ああ、男に戻ったのか・・・。」

妙に冷静に発せられた低い声。久しぶりに聞いた。念のために持ってきた男性物の服に着替え、リビングに向かった。
まだ朝が早く、6時くらいだった。おは朝占いをしっかり見て、朝食を終えたらボストンバックに荷物を詰め、コンビニへ向かった。
レターセットを買い、筆箱を自分の部屋から持ってきてボールペンで『高尾和成様へ』と丁寧に書く。




「よし、書き終わったのだよ・・、」

そう呟いた瞬間、目から温かいものが出てきた。それを涙だと認識するまでにそう時間はかからなかった。
ああ、楽しかった、幸せだった日々が終わってしまった。高校の時無理やり付き合ってもらい、同居までさせてもらい、高尾には秘密だが、子供まで授かった。それに、一日そばにいさせてもらった。貴重な休みだっただろうに。ああ、本当に高尾には迷惑をかけすぎた。高校時代からわがままを言って困らせ、今まで俺のわがままに付き合ってもらった。もう、十分高尾の人生を狂わせてしまった。ごめんなさい。あなたには普通の、可愛い女の子のとなりがにあっています。こんな大男に戻ってしまった自分なんか、可愛げもなかった女だった俺なんか、高尾のとなりには不釣合だった。ああ、終わるのだな。いや、終わらせなければ。

「さようなら、 和成・・・。幸せになってくれ」

大きいボストンバックを片手に、高尾との楽しかった思い出がいっぱい詰まった家から出ていった。鍵はポストに入れ、あの部屋には俺なんて最初から居たのかどうか危ういくらい、自分のものを全部この中に詰めた。ただ一つ、俺から彼に送った手紙だけを置いて。








+++



「ふー・・・、ただいまー・・・、って、あれ?」

しんと静まり返った玄関。明かりが点っていないリビング。人の気配が全くしない。

「真ちゃんまだ帰ってきてないのかな・・・?」

現在朝7時。昨日も、返してはもらえず、大学生なのに朝帰り。つまり、この時間には緑間はどこにも出かけていないはずだ。下手したらまだ寝ているはず。
なのに、誰もいない。
まさか、何かの事件にでも巻き込まれたのだろうか?出なかったら、痴漢とかに・・・。
そう考えると居ても立ってもいられず、リビングに飛び込んだ。

「緑間!!!」

いない。部屋は?

「緑間・・・!!!」

いない。
何もない。
一昨日まではそこにあったもの全てが無くなっている。
もとから、”緑間”がいなかったかのように。
唖然とし、もう一度リビングに向かった。
ふとテーブルを見ると、そこには『高尾和成様へ』と、見慣れた綺麗な字で書かれた封筒が置かれていた。

「しんちゃん・・・?てがみ・・・?」

緑間からの手紙だと思い、すぐに封を切り中身を取り出した。

*****

 


ピンポーン

「はい?」

あの手紙を読み終えた高尾和成・・・、俺は、手紙を握り締めたまま緑間の実家へ行った。

「しんちゃん、は、います、か?!」

「あら、高尾くん?お久しぶり。真太郎は、中学時代の同級生とマジバーガーで、会うのだよと言って出かけたわよ?」

「ありがとうございます!!!!朝早くすみませんでした!失礼します、」

「あ、待って、」

急いで真ちゃんのもとへ向かおうとした俺を、真ちゃんのお母さんは止めた。急ぎたいが、仕方ない。

「はい?」

「あの、こんなこと聞くのおかしいけど、男の子の真太郎、息子のことをどう思っていますか?」

「へ?」

「あの子、『女の間だけ、付き合ってくれるのだよ、嘘でも好きだと少しでも思ってもらえたら、いいのだが、』と微笑みながら泣きそうな顔をしていたの。つまり、男の子の真太郎は高尾くんに付き合ってもらえない。好きだと思ってくれない。と思っていると思うの。だから、」

「・・・。」

「男の子だった真太郎も、女の子だった真太郎も、ちゃんと好き・・、愛しててくれなきゃ、真太郎は任せられないと思っているの。」

「・・・、真ちゃんは、とても愛されているんですね。でも、俺の方が、何倍も愛しています。真ちゃんを、女の子の真ちゃんも男の子の真ちゃんも、とても、とっても愛しています。大切な恋人です。だけど、その大切な恋人を俺は気づつけてしまったようです・・・。泣かせてしまったと思います。これからも、傷をつけてしまったり、泣かせてしまうことがあるかもしれません・・・・。俺はその痛みを全て教えて欲しい。一人で抱え込まないで欲しい。そう強く思います。真ちゃんにとって、傍にいて落ち着く、頼りになる、愛し合える存在になりたいです。俺のわがままですが、真ちゃん・・・、緑間真太郎君を、俺の手で俺の隣で幸せにしたいです。」

「そう・・・、私は最初から男の子同士の二人でも、賛成だったわ。恋は人の自由ですもの。好きになった相手がたまたま同性だったか、異性だったかの違いだけで批判しません。だから、真太郎を幸せにしてあげてください。」

「はい・・・!」

「ごめんね、時間をとっちゃって、真太郎を迎えに行くのでしょう?いってらっしゃい。3人一緒に帰ってくるのを楽しみにしてるわ。」

「?3にん・・・?・・・・、えっと、行ってきます・・・・!」

一礼し、真ちゃんのもとへと走った。


+++++++


「お久しぶりです、緑間、くん。」

「ああ。」

「お前、男に戻っちまったのかよw」

「・・・ああ。」

「で、その子は誰っスか?」

「子供だ。」

「誰と誰の?」

「俺と高尾の・・・、だ。」

「「「「「えっ」」」」」

今日は中学時代の仲間、キセキの世代たちの月一の集まりだった。俺にとっては男に戻って家族以外で初めて会う者だ。マジバの窓側の席を確保し、それぞれレジに行く。両サイド3人ずつ、窓側から黄瀬・赤司・黒子、紫原・青峰・俺の順で座る。
和真は、最初は俺を警戒していたが、前みたいに接していたらだんだん俺のことを女だった俺と同一人物だと分かってくれたのだろう。そのあと、ずっとくっついて離れてくれなかった。だから今日連れてきたのだ。
キセキの世代、赤司、青峰、黄瀬、紫原、黒子に子供のことを説明し、なんとか納得してもらえた。

「で、その子はこれから一人で育てるんですか?」

「ああ、そういうことになるな。」

ぎゅっと和真を抱きしめ、頭を撫でる。ふにゃっと笑ってきて可愛い。

「真太郎、それは結構大変じゃないかな?」

「ああ・・・、和真にも悪いと思う。お世話は母に教わってなれていくのだよ。」

「ぁー、あぅっ」

ぺちっと、頬に手を当てられ、ぅーぅー、と、歌でも歌ってるかのように何かを言おうとしている。

「・・・和真君がめっちゃ可愛いっス・・・!!

「真太郎、僕のところ来ないか・・・?」

「「「「「は?」」」」」

「冗談だよ、冗談、で、高尾和成は、真太郎のこと好きではなかったのかい?」

「あ、ああ、あいつは前から俺のわがままを笑って聞いてくれたのだよ。だから、今回だって、俺のわがままを聞いてくれたのだよ。随分長いあいだ俺なんかのわがままに付き合わせてしまった。」

「つまり高尾くんの気持ちは、聞いてないんですね。」

「・・っ、そんなの聞かなくともわかっているのだよ・・・。しかも、俺のわがままは、『自分が女のうちだけでいいから付き合ってくれ』だ。約束なのだよ。こんなに長く高尾の人生を狂わせた。きっと、本当はちゃんと愛せる女性と付き合うべきなのだよ。」

「なら、あれはなんだよ、」

青峰が、窓の外を指さす。そこには、息を切らせこちらに迷いなく進んでくる高尾。

「やはり、手紙だけではダメだっただろうか・・・?」

「いや、そっちのほうじゃないと思うけど~?」

は?と、紫原の方を向き、また窓の外を見るが、高尾がいなかった。

「誰探してんの緑間。」

背後から聞きなれた声よりも低いが、知っている人物が話しかけてきた。

「え?」

「やあ、高尾和成」

「「こんにちは高尾くん」」

「うっす」

「こんにちは~、」

「こんにちは、じゃなくって!!!真ちゃん!ちょっと緑間借りる!!」

「「「「「どうぞ」」」」」

「え、ちょ、たか、」

いきなり右手を引っ張られ、左手に和真を落とさないように大切に抱きしめ、キセキと別れた。


******

「高尾っ、どこまで行くのだよっ、」

「・・・」

「ぅ~、うぁあ!」

「和真・・・、」

「?和真って誰?」

「っ、」

「?その子供、誰・・・・、」

高尾の視線は俺の左手に抱えた和真を見ていた。和真も高尾をじっと見つめ、パチパチと瞬きをする。
嘘をつくか、本当のことを言ってしまうか、悩む俺に高尾は先ほどよりももっと低い声で、問いかけてきた。

「この子の目、緑間に似てんね。もしかしてさぁ、この子誰かとの間の子供?」

「・・・っ、」

「・・・合ってんだ。ねえ、誰との子供?大切そうに抱え込んじゃってさぁ。しかも、男に戻ったの普通なら一緒に暮らしてる俺が最初に聞きたかったのに、キセキとかに話しちゃうんだ。」

それは、一刻も早く別れたかったということだろうか・・・?なら、もう離してくれ、苦しいのだよ、立ち直れた頃に絶対にお詫びをするから。今は見逃してくれ、これ以上心の傷を抉らないで。

「何で泣いてんの?泣きたいのはこっちだよ。」

「・・・?」

「ずっと好きだった子に、今まで一番そばにいた子に、俺の知らねーとこで子供いて。好きな子は幸せそうにその子抱きしめて。ねえ、俺じゃダメだったの・・・?俺、幸せにするとか言って、幸せにできなかった?」

「え、お前、何を言っているのだよ・・・?」

「だから、俺お前のこと幸せに、」

「その前だ。」

「俺じゃダメだったの?」

「もっと前」

「? ずっと好きだった子に」

「それ、お前は俺が好きなように聞こえるが・・・?」

「は?好きだよ、高校時代からずっと!!!」

「え、だって、振られて、しつこく言い寄って無理矢理付き合わせたのは俺だぞ?・・・?」

「無理やりって何?俺自分の意志で付き合ったんだよ?」

「でも、最初は『女の子じゃないから』という理由で、フラれたのだよ?」

俺が疑問をぶつけると、あー、それか、とか、呻きだした。

「あれは、うん、えっと、まず中学時代ボロ負けしたときに一目ぼれしました。何度も男だぞとかいろいろ自分に言い聞かせたけど、全然ダメで、そんで高校で再開。真ちゃんは俺のこと覚えてはなかったけど、四月に見た真ちゃんは中学の時よりも、もっと冷めたような目をしてて。そっから、少しでも俺の存在を見て、認めて欲しくて頑張った。真ちゃんも、居残り練習とか一生懸命にやって、スリーポイントが入る範囲をどんどん広くしようと少しずつ場所移動して、想像してた”緑間真太郎”とは全然ちがくてさ、惚れ直した。そしたらいつだったかは曖昧だけど、話しかけてもらえてすんごい嬉しかった。」

ああ、あの頃はあんまり一年で練習している人も少なくて、ただひとりいつも居残り練習してる”高尾和成”が気になって話しかけた。そこで初めて中学時代戦ったことを知ったのだが。

「いつしか、告白しようか迷ったけど、両思いになれる可能性なんてホント少なくて、もし無理だったら隣に置いてもらえないかもしんないって考えたら、止まんなくて。もし付き合えても男同士なんて、周りから批判されるし、将来しんちゃんに迷惑かけると思った。だから、この恋を殺そうと思ったんだけど、そう思ったら数日後に真ちゃんから告白してもらえて・・・。嬉しくて叫びそうだった。抱きしめて、真ちゃんの胸で泣いちゃったかもしんない。でも、数日前考えたことを思い出して。真ちゃんと俺の間違いを正そうと、ひどい振り方した。次の日しんちゃんが女の子になってまた告白されて、もし戻らなかったら、ずっと一緒にいれる。もし・・・・、」

「たかお、」

「俺ひどいよね。真ちゃんの幸せのためとか言って、振って。女の子の真ちゃんが宮地さんといい感じで、もうホント頭真っ白になって。」

「たか、お」

「でも、他の人と幸せになれたんだね・・・・。俺のそばで幸せにしたいとか、わがままばっか言ってごめん・・」

「ばか尾!この子はお前との子だ!」

「え」

「俺のわがままで、避妊具に細工して、生んだのだよ・・・。」

「うっわ、大胆・・・。」

「黙れ・・・!」

「へえ、この子俺との子なの?」

先程まで泣きそうな顔をしていた高尾は、幸せそうに目を細め口元を緩めて、子供を撫でていた。

「名前は・・・?」

「和真・・・だ」

「俺の名前と真ちゃんの名前・・・?うっわ~、いい名前・・・。」

「勝手に、名前を使って済まない・・・。」

「え?全然!てか、嬉しすぎて死にそう!男の子・・だよね?真ちゃんみたいに美人系かな・・・?目は緑色なんだ!すっごく綺麗・・・!」

「いや、高尾みたいに、気配りもできて、なんでもできるかっこいいやつになるのだよ。」

「なにそれ、すっごいデレ・・・!!!」

顔を赤くする高尾に、つられて俺も顔が熱くなる。高尾の顔を見ていられなくて、視線を外し、しばらくしてもう一度チラッと見たら、真剣な顔をした高尾と目があった。

「真ちゃん、順番も何もかもごっちゃごちゃになっちゃったけど、これからも一生一緒にいてください。ホントは、ここで指輪渡したいんだけど、急すぎて用意してないんだ・・・。ごめんね?」

「・・・、いや、これ以上幸せになると現実味がなくて夢だと思ってしまうのだよ、」

「へへっ、だから、今はこれで許して・・・?」

そういい俺の左手をとって、薬指にちゅっと口付けをされた。

「なっ、」

「予約!絶対キャンセルなんかしねーけどな!」

ならば、と、熱い顔をごまかしながら、高尾の左手をとって薬指にキスをした。

「えっ?!真ちゃん・・・?!」

「おれも、予約なのだよ・・・!もちろんキャンセルなどしない。」

「うっわああ!!!もうホント幸せ。大好き真ちゃん!」

「俺も、なのだよ。」

高尾が顔を近づけてきたので、ぎゅっと目を瞑ると、だぁー!と元気のいい声が下のほうから聞こえた。

「和真・・・。」

「ははっ、もちろん和真も大好きだよ!」

腕に抱いていた和真の左頬に俺が、右頬に高尾がキスをした。















END